相続人はこのような亡くなった人が他人に貸していた債権も、他の相続財産と同じように相続できます。
その相続手続は相続人となった人が貸金債権や売掛金債権の債務者に対し、その債権を相続した旨を通知し、債務者から債務確認書などをもらっておくことが肝要です。特に口約束など正式な契約書を交わしていない場合や、出世払いなどの場合は、この手続きを忘れないことです。
口約束の場合、後から相続人が支払いを求めても「そんな借金などした覚えが無い」としらばっくれるたちの悪い債務者がいないとも限りません。
もっとも、債務確認書がとれなくても、債務者が相続人からの通知に従って、貸金や売掛金の一部でも相続人宛に支払ってくれれば債務を確認したのと同じです。
これらの債権の相続で注意しなければならないのは時効の問題です。
既に時効が完成している債権を相続しても、債務者は時効をたてに(援用して)支払いを拒むのが通常でしょう。これでは、相続しても意味がありません。そこで、遺産分割する前に、個々の債権の時効の有無を調べておく必要があります。
このほか、被相続人の未払いの賃金なども相続財産として相続することができます。被相続人が勤めていた会社などに支払いを請求することになります。
このような給与関係の時効期間は2年です。ただし、退職金の時効期間は5年となります。
なお、相続財産の時効については、民法ではその起算点を
以上のいずれかとし、その時から6ヵ月間は時効は完成しないと決められています。
よく勘違いするのですが、時効期間が経過すれば自動的に時効が完成し、債務者は支払いを請求できなくなると考えている人がほとんどですが、そうではありません。
時効は債務者が、時効だから支払いはしないと主張して初めて効力を発します。つまり、債権の相続人は時効だからとあきらめずに債務者に支払いを請求してみてはどうでしょうか。これによって、債務者が一部でも支払いをしたり、借金のあることを認めたとすれば、時効は中断します。
時効完成までにはまだ時間があっても、債務者に返済能力がない場合があります。このような場合、遺産分割でその債務者に対する債権を相続分として割り当てられた相続人は結果として返済を受けられないこともあり得ます。
実際に返済を受けられなかった場合、その債権を相続した相続人だけが不利をこうむらないよう、回収額との不足分を他の相続人に請求することができます。このような場合、、相続人全員がその相続分に応じ、債務者の資力不足を引き受けなければならなにのです。(共同相続人の担保責任、民法912条)
例えば、父親の遺産2千万円を兄弟2人で各二分の一ずつ相続したが、弟が相続したのは貸金債権の1千万円でその内の半分の500万円しか回収できなかったとしたら、この場合、回収できなかった500万円は兄弟で均等に責任を負うことになります。弟は兄にたいし、500万円の半分の250万円を請求できます。
債務者宛に相続した旨を通知し、同時に債権を相続したことを連絡する。そして、貸金債権、金銭消費貸借契約書の訂正を求めるか、債務者から債務確認書を受領すること。また、売掛金債権の場合は債務者から債務の残高確認をとることです。
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